平成十七年の新春にあたり、謹みて皇室の弥栄を寿ぎ奉りますとともに、氏子、各議員、そして崇拝者の皆様の益々のご健勝をお祈り申し上げます。
さて、平成十六年を振り返りますと、まさに「自然の脅威」に翻弄された年といえましょう。数多くの台風が上陸し、それにより四国、福井、或いは豊岡をを始めとしまして全国各地で風水害が発生しました。

 また十月には、震度七という阪神大震災以来の強い地震が中越地方を襲いました。被害に遭われた方、そして今もって避難所での生活を余儀なくさせられている大勢の方々に、こころよりお見舞いを申上げます。

 古来より日本人は、自然の脅威に対してそこに神様の霊力を見てとり、これを鎮めるためには、まず自信が慎みのこころをもち、ひたすらに祭事を執り行ってきました。そしてこのまつりを通して人間は、自然を征服するのではなく、また一方的にそれに打ちひしがれるものでもなく、自然と人間を調和させてきた歴史があります。

 このような大地震で、時速二〇〇kmの新幹線に負傷者が一人も出なかったこと、或いは台風の進路予測の正確さなど科学技術の力には目を見張るものがあります。

 人間の叡智の一つとして自然の脅威を未然に防ぐ科学の力はもちろん大切なものですが、一方、自然の懐の中で生かされている人間の存在、神祭りを通じて自然と対話してきた日本人のこころもちをもう一度、再認識すべき時がきていると思われます。

 江戸時代に西宮に住んでいた當舎屋金兵衛が、川から絶えず流れ出る土砂、或いは波風から西宮の港を守るため築州建築を計画しましたが、幾多の難関にぶつかり工事もなかなか進捗しませんでした。

 ここにあって一途に神仏に祈りを捧げ、加えて浜辺には海の神様である住吉社を勧請しました。このような厚い信仰、漲る情熱をもって更に事にあたると、漸く工事も進み、穏やかな港を築き上げることができました。

 これが遥か二〇〇年後の現在の西宮の港、日本でも有数のヨットハーバーにつながるわけです。川や風という自然から与えられた難問をひたすらなる信仰によって神々のご加護を受け、川の恵み、風の恵みへと調和させて見事に一大事業を成し遂げた例をここに見だすことができます。

 現在の事業象の淵源には、自然と信仰の壮大な物語があります。これらを歴史の中から明らかにし、「自然への畏敬」のこころや神々が宿る自然に囲まれ、生かされているという自己の存在認識を後世に伝えていくことが、神社に今与えられた使命の一つと考えます。

 本年も広大無辺なるえびす大神様のご神徳を戴かれまして、益々のご多幸とご健勝を祈念申上げ、年頭のご挨拶といたします。


西宮神社 宮司 吉井 良昭



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