時の西宮神社社用日誌をひもとく「えびす瓦版」。
今号は延享元年(西暦一七四四年)に記された社用日誌です。


神主 吉井左京亮良行
    吉井采女
社家 東向左膳



祝部 大森善太夫
 〃  田村伊左衛門
 〃  廣瀬丈右衛門


祝部 大森主膳
 〃  大森主水
 〃  堀江権太夫
 〃  橋本治太夫


神子   紅野治太夫
 〃    大石勘太夫
社役人 辻重左衛門
 三月三日より四月二十三日までの五十日の間、享保七年以来二十二年ぶりに本社において開帳が行われた。

 昨年六月に藩主である尼崎表と大阪御奉行所に開帳願書を差し出し、続いて上京の上当社伝奏家の久我大納言家へも届出を差上げた。翌七月には早速下図の通り縦三尺余、横一尺八寸程の立て札を作り、尼崎、神崎、伊丹、大坂(日本橋、京橋、難波橋、安治川、天王寺黒門口、本町橋)堺、兵庫そして播州姫路に出向いて竹の杭に縄で固く締めて立てた。

 また社中には御開帳中の定めとして
一、朝夕御神事怠慢あるまじき事
一、昼夜火の用心は入念の事
一、銘々の引受け場所を明けて他出しない事
一、散銭は勿論札料初穂料寄進の金銀米銭
   は尽く神納する事
一、境内境外の水茶屋見世物の類、菓子見
   世にも無用に立ち入らぬ事、また商人等
   依怙贔屓の沙汰をしない事

 これらの事に違背する者は相応の過料を申渡す。この定めをよく守り昼夜丹誠を抽んじて各々は和順に申合せて大切に勤める事とした。

 三月に入り準備も整い、開帳前日には尼崎より御奉行御目付衆他が西宮の町濱の四軒の宿に泊まる。

 愈々三日。明六つ時(午前六時)に神主一行が御神前へ進み御開帳の祭典が始まった。

乱声 着座 祓神楽 御戸開
音楽 御膳神酒献上 祝詞
奉幣 祓神楽 音楽 徹御膳
各退下
雨天の日も参詣は多く境内は大いに賑わった。主な参詣、寄進は次の通りである。
  尼崎西町、大生鯛、御神酒
  明石問屋中 金弐歩
  大坂雑こ場 大行灯張生鯛
  安治川廻船問屋沖 御供米他
  鳴尾村錦屋仲間 金壱両
  大坂三井呉服店 青銅五〆文
  兵庫津沖買中     〃
  江戸太々神楽講 太々神楽祭

当所濱之町 舟だんじり曳く
紀州廻船 木灯篭一対、銭額
御影村石船中 金弐百匹、まんぼう魚壱匹但し参
詣の節船に取付け、生取にて持参
大坂北濱講中 銭細工額をだんじりに載せはやし立て献上
当所横路町中 銭細工の御太刀一振、神酒御鏡餅、金百匹

一方境内には開帳のため随時の設営が行われ参拝者の便宜を図った。
  御影札、御守札等の売場
  御供神酒所
  献上物置場
  番所
  御仮殿にて松原天神の御神像開帳
  本地堂にて御宝物開帳
  拝殿にて竜明珠
  南宮にて剣珠
  萬人講御膳すすめ場
  当所庄屋年寄中休息所
四月二十三日の御神像御閉帳の神事を以って滞りなく五十日間の開帳を終える。
翌日には尼崎へ御礼、そして大坂へ出向き御奉行所へ開帳終了の御届を持参した。

乍恐以口上書御届申上候
先達而被為仰付被下候西宮恵美酒神像并傳来之
神宝等開帳之儀三月三日与四月二十三日迄五十日
間首尾能相仕廻候ニ付御届奉申上候已上
 摂州西宮神主
    吉井左京 亮 印
    延享元年甲子四月二十四日
御奉行所

 六月には御開帳の慰労として当所御陣屋の藤介殿や御足軽衆中を神主宅に招いて料理、浄瑠璃などで遊宴を催した。

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