時の西宮神社社用日誌をひもとく「えびす瓦版」。
今号は寛政六年(西暦一七九四年)です。


神主 吉井陸奥守良足
    吉井近丸
社家 東向斎宮



祝部 大森数馬
 〃  (田村伊織)
 〃  廣瀬右門


祝部 大森主水
 〃  (大森主膳)
 〃  堀江左門
 〃  橋本右膳


神子   紅野次郎太夫
 〃    大石長五郎
社役人 辻 兵治
 奥州白川領の須賀川町より三嶋木紀伊の倅常陸が西宮本社へ参上し、四月から七月までの間滞在した。六月に京都の吉田家で官位願を行い、従五位下紀伊守に任ぜられた。

 西宮では江戸支配所のこと、奥州の西宮配下の ことなどを話しあった。その結果、支配所の宗田越前や二本松領触頭の退役を決めた。また神職の宗旨除けも相談され、二本松領では西宮社の神職は大方宗旨除となったが、白川領では宗旨がありこの三嶋木の祖父が五月に亡くなった際も、寺僧があれこれ申し葬礼が延引したので、宗旨除印の儀の依頼状を西宮本社神主より白川役所まで差し出すこととした。また同領他の神職の證状も出してくれるよう願うので銘々の名前が分かれば證状を差し下すことを伝え、後日十一通を出した。紀伊が神道葬式相伝を願うので、これを免じて葬式祝詞を書付けて渡した。

 また白川の御領主である松平越中守(定信)殿の御先祖である桑名少将殿と申す方の木像が桑名の寺にあり、このたび白川城内に社を建てて大きな拝殿を建立し、この社に霊神号、明神号を賜りたいとの思し召しがあると紀伊が承ったので、願主と申し合わせこの神号を吉田家から戴こうと考えているとの由。この一件の入用を拝借したいと願うので金子二十五両を紀伊へ渡した。
一筆致啓上候 先以弥御堅固御勤之旨珍重
存候 然者奥州岩瀬郡須賀川蛭児社大宮司
三嶋木紀伊守今般官位為願望上京候処願之
通首尾能蒙 勅許冥加之至存候 委細者同
人可致演説候 恐惶謹言
          鈴鹿出羽守
          鈴鹿筑後守
          鈴鹿近江守
          鈴鹿土佐守

六月三日 吉井陸奥守殿



 西宮社の江戸支配所が設けられた明確な年月は不詳であるが、諸国への神像札賦与が神主の直支配となり、享保八年(1723)に同支配所役人に永井外記が任命され寺社奉行所へ届けられたことが節目となっている。この永井より五代目にあたる宗田越前が支配所での配下の取り扱いも宜しくないのでこのたび召し放つこととなった。跡役は正木監物とし、上野国宇都宮の上野左膳を立会いとし「諸神前神用物并記録諸帳面其外諸道具」を引き渡すこととする。

 このことについて、去年九月に亡くなった前役の宗田典膳の後家が西宮へ参り、この一件のことを縷々語り相州小田原の川西村へ帰国する。餞別として金子二百疋を遣わす。
 正月六日の江戸城での将軍への御目見は元禄の頃は毎年の出府が義務づけられ、その後元禄十六年(1703)には隔年毎、更に享保十六年(1731)には三年毎に改められていた。本年はちょうど出府の年にあたるため、恒例により昨年十一月二十五日より十二月朔日までの七日間公儀御祈祷を斎行し、その巻数を携え十二月十日に西宮を発つ。西国街道を登り京都で傳奏家である勧修寺家、千種殿家へ挨拶、東海道を下り同月二十四日に江戸の支配所旅宿に着く。

 諸準備を整え正月六日には網代輿に乗り、小姓、草履取、長刀、片箱、両掛、笠籠などを引連れ六つ半過ぎに入城する。御玄関より三間半奥にて巻数を差上げ、表大広間能舞台の正面の獨礼座にて伊勢両宮、大山崎などと同席す。四つ過頃公方様が出御され御目見御礼が滞りなく済む。下城し大下馬にて輿に乗り御老中方へは巻数と三本入扇子箱を台に載せ、国所・姓名・旅宿を書き付けた下ケ札をつけたものを献上。続いて寺社御奉行衆へも手札を持参し御礼を申上げる。尚、前領主家の青山大膳亮殿は当年御屋敷替えにて青山におられるとのこと、甚だ遠方で勝手が悪いので当日は伺わず日を改める。

 九日は江戸出府中に急逝した伯父良行が葬られている三田の大松寺に参る。十日、酒問屋仲、支配仲へ挨拶に廻る。扇百二十六本を二本入りとして六十三軒分を用意する。特に大々神楽執行の年であるので支配仲間行司吉田吉兵衛、ざこや弥右衛門両家へ宜しく頼み入る。この日は西風も強く本郷、駒込、牛込あたりが火事となり寺社御奉行板倉周防守様、脇坂淡路守様御類焼、その外仙台長州安芸黒田上杉土州の大御大名方も御類焼、三十余ケ所と承る。十二日には大松寺から煙竹と海苔三十枚が使僧により届けられる。十四日板橋より木曽路にて帰路につく。

次ページへ >>


このホームページへのご意見ご質問は、こちらのフォームにお願いします。
当ホームページの写真・イラスト・記事の無断転載を禁じます。


発行/西宮神社
〒662-0974
兵庫県西宮市社家町1-17
電話:0798-33-0321
FAX:0798-33-5355
編集/事業課広報
制作/(有)DECCA JAPAN

Copyright ©2008 NISHINOMIYA SHRINE All Rights Reserved.