年頭にあたり、謹みて皇室の弥栄を寿ぎ奉りますとともに、氏子、各講員そして崇敬者皆様方の益々のご繁栄をお祈り申上げます。

 元旦の夜にみる夢は「初夢」と称して、人々はその夜にどのような夢をみるかでその年を占ってきました。誰しも良き年でありたいわけですから、良い夢を見たい、そうするにはと考えられたのが枕の下に七福神の絵を敷くということです。そうすると七人の福神の合力により縁起のよい初夢が見られと信じられてきました。

 さてこの七福神には、それぞれの福徳が備わっております。寿老人---寿命、大黒天---有福、福禄寿---人望、弁財天---愛敬、毘沙門天---威光、布袋---大量、そしてえびすさまには「清廉」の徳が備わっておられます。

 また次のような言い伝えもあります。えびすさまが西宮にお着きになられたとき、西宮には道薫坊という方がおられ、この方が幼いえびすさまを人形であやしこの人形によって善と悪の区別を教えられたというお話です。即ち善にそって正直に生きるという教えです。この「清廉」と「正直」がまさにえびすさまのみこころなのです。釣竿一本を持たれて大漁をもたらされることも、「清廉・正直」から発せられるご神徳なのです。

 十一月になると商店では「誓文払」が行われます。全国的には「えびす講」といわれているこの慣わしは、一年間に得た利益をお客様に還元するとともに、現代的に言えば職業倫理の原点に立ち返る、まさにえびすさまの大前で「正直」に立ち返ることなのです。

 神さまのみこころを、代々こころの内に受け継いできたのが日本人です。こころの曇りをとり除いて、更にこころを磨くとそこには神さまから受け継いできた大切な「正直」のこころが現れます。「誓文祭」「えびす講」の神事を通して、このこころに立ち返ることがえびす大神さまのみこころに叶うことなのです。

 不正直、不誠実なことが目立つ昨今ですが、商売の上で時にはこのようなことも起り得るでしょう。しかし古来人々は毎年のえびす講において、えびす大神様の恵みに感謝するとともに、一年を振り返り自省しました。そして自省したことは来るべき年には必ず活かし、これを積み重ねて家訓、商売道徳が生まれてきたのでしょう。

 新しき年を迎え、ひとりひとりがえびすさまの「清廉」「正直」のみこころにたち、行動することが肝要なのではないでしょうか。

 えびす大神さまのご神徳を厚くいただかれ、良き年でありますようこころよりお祈り申上げます。


西宮神社 宮司 吉井 良昭

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